結論:異常を認めたら「直ちに補修」、記録には検査結果と措置内容の両方を残す
結論から言うと、特定自主検査(年次)や定期自主検査(月次)で機械に異常が見つかった場合、事業者は直ちに補修その他必要な措置を講じなければならず、その検査結果だけでなく「どんな異常があり、どう補修したか」までを記録として3年間保存する義務があります。「異常なし」の記録だけを残して終わりにしてしまうと、法律上要求される記録として不十分になりかねません。本記事では、この補修義務・記録義務の条文上の根拠と、自社で不具合が見つかったときに実際に何をすればよいかを整理します。
なぜ「補修して終わり」ではダメなのか──条文上の根拠
労働安全衛生法45条1項は、事業者に対し、政令で定める機械等について定期に自主検査を行い、その結果を記録しておくことを義務づけています(労働安全衛生法)。この「自主検査」には、フォークリフト・車両系建設機械・不整地運搬車・高所作業車・動力プレスの対象5機種であれば、年次の特定自主検査(有資格者または登録検査業者が実施)と、月次の定期自主検査(資格制限なし)の両方が含まれます。
異常を認めたときの対応について、フォークリフトを例にとると、労働安全衛生規則151条の26第1項は次のように定めています。
事業者は、第百五十一条の二十一若しくは第百五十一条の二十二の自主検査又は前条の点検を行つた場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。
(労働安全衛生規則151条の26第1項)
条文上、この義務は年次の特定自主検査(151条の21)・月次の定期自主検査(151条の22)だけでなく、記録義務のない始業前点検(前条=151条の25)で異常が見つかった場合にも及びます。つまり「検査した・しなかった」だけでなく、「検査した結果どう対応したか」までが法律上の義務の範囲に入っている点が、見落とされやすいポイントです。他の対象機種(車両系建設機械・不整地運搬車・高所作業車・動力プレス)の安衛則にも、同様に検査後の補修その他必要な措置を求める条文が置かれています。自社の対象機種でどの条文が該当するかまで詳しく確認したい場合は、所轄の労働基準監督署や登録検査業者・建設荷役車両安全技術協会(建荷協)に確認するのが確実です。
記録についても、労働安全衛生規則151条の23は「前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない」と定めており、記録すべき事項として検査年月日・検査方法・検査箇所・検査結果に加えて「補修等の措置内容」を明示しています(同151条の23)。検査結果の欄に「異常あり」とだけ書いて補修内容を書かずに終わっている記録は、この条文が求める記録事項を満たしていない可能性があります。
機種別の検査周期と、異常時対応・記録の関係
対象5機種の年次(特定自主検査)・月次(定期自主検査)の周期は次のとおりです。異常時の補修義務と記録3年保存は、いずれの機種・いずれの周期にも共通してかかります。
| 機種 | 年次(特定自主検査)の周期 | 実施者 | 月次(定期自主検査) |
|---|---|---|---|
| フォークリフト | 1年以内ごと | 有資格者(事業内検査者)または登録検査業者 | 1か月以内ごと(資格制限なし) |
| 車両系建設機械 | 1年以内ごと | 同上 | 1か月以内ごと(資格制限なし) |
| 不整地運搬車 | 2年以内ごと | 同上 | 1か月以内ごと(資格制限なし) |
| 高所作業車 | 1年以内ごと | 同上 | 1か月以内ごと(資格制限なし) |
| 動力プレス | 1年以内ごと | 同上 | 定めなし |
自社の機械がどの周期に該当し、次回いつまでに検査・記録が必要かをまず確認したい方は、記録表テンプレート生成ツールで機種ごとの検査項目と様式のたたき台を作成できます。不具合の内容を記録に残す際も、あらかじめ様式が決まっていると「補修等の措置内容」の欄を書き漏らしにくくなります。
自社で確認・対応する手順
- 検査を実施する:年次(特定自主検査)・月次(定期自主検査)それぞれの周期で、機種ごとに定められた検査項目に沿って検査を行います。
- 異常の有無を判定する:検査項目ごとに異常の有無を確認します。ここで「異常あり」となった項目が、補修義務の対象です。
- 直ちに補修その他必要な措置を講じる:異常を認めた場合、労働安全衛生規則の規定(フォークリフトの場合は151条の26第1項)に基づき、応急処置ではなく実際の補修・部品交換・使用停止といった必要な措置を速やかに講じます。措置が完了するまで当該箇所を使用しない判断も含まれます。
- 記録を作成する:検査年月日・検査方法・検査箇所・検査結果に加え、異常の内容と講じた補修等の措置内容を記録します。項目だけを埋めて終わらせず、「何が」「どう」悪かったのかが後から読んでわかる程度の具体性で書きます。
- 記録を3年間保存する:作成した記録は3年間保存します。年次検査であれば1年ごとに1回、3年間で3回分(3年間 ÷ 1年ごと = 3回分)の記録が手元に残っている状態が目安です。月次の定期自主検査であれば1年で12回、3年分では12回 × 3年 = 36回分の記録を保管することになります。
- 標章を確認・更新する:年次の特定自主検査を実施した機械には検査済標章を貼付します。補修に伴って機械の状態が変わった場合でも、標章の記載内容(検査実施年月等)と実際の検査記録が対応しているか確認しておくと、後で標章と記録の食い違いを指摘される事態を避けやすくなります。
自社の台帳で「どの機械が」「いつ」「どんな異常で」「どう補修したか」をまとめて管理したい場合は、記録表テンプレート生成ツールを使うと、検査要否・期限の確認とあわせて記録の様式を整えられます。
注意点・誤解しやすいポイント
- 「異常なし」だけを記録して終わりにしない:異常が無かった場合でも検査結果自体を記録する義務がありますが、異常があった場合は結果に加えて補修等の措置内容まで記録する必要があります(労働安全衛生規則151条の23)。この違いを意識せず、毎回同じフォーマットで「異常なし」だけを埋めていると、異常時の記録欄が形骸化しがちです。
- 保存期間3年の起算点を取り違えない:3年保存は「検査の記録を行った時点」から数える期間であり、機械の使用開始日や購入日からではありません。古い記録を廃棄する際は、検査年月日を基準に3年経過しているかを確認します。
- 検査者の資格と、補修を行う者の資格は別の問題:特定自主検査を実施できるのは有資格者や登録検査業者ですが、見つかった異常の補修自体を検査者本人が行う必要はありません。ただし、補修後に再度その箇所が検査項目の基準を満たしているかどうかは、記録上明確にしておくべき点です。
- 外注時も記録の保存責任は事業者側に残る:登録検査業者に検査を依頼した場合でも、検査記録の3年保存義務は使用事業者側にあります。業者から受け取った記録(補修等の措置内容を含む)を自社でも保管してください。
- 始業前点検も「異常なし」で済ませない:始業前点検自体には記録の保存義務はありませんが、異常を認めた場合の補修義務(前掲151条の26第1項)は始業前点検にも及びます。記録義務がないからといって対応を怠ってよいわけではありません。
14日間の無料トライアル(クレジットカード不要)を使うと、機械台帳・検査記録・次回期限をクラウドで一元管理でき、異常時の措置内容もあわせて記録に残せます。紙やExcelでの管理に限界を感じている場合は、こちらから試してみるのも一つの方法です。
まとめ
- 検査で異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じる義務がある(フォークリフトの場合は労働安全衛生規則151条の26第1項)
- 記録には検査結果だけでなく、異常の内容と補修等の措置内容まで残す必要がある(同151条の23)
- 記録の保存期間は3年間で、起算点は検査を行った時点
- 検査を外注した場合でも、記録の保存責任は使用事業者側に残る
- 具体的な条文の該当箇所や運用に迷う場合は、所轄の労働基準監督署や登録検査業者・建設荷役車両安全技術協会(建荷協)に確認するのが確実
詳しくは所轄の労働基準監督署や、登録検査業者・建設荷役車両安全技術協会(建荷協)にご確認ください。
よくある質問
Q. 検査で異常が見つかったら、いつまでに補修すればよいですか?
労働安全衛生規則は「直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない」と定めており(フォークリフトの場合は151条の26第1項)、特定の猶予期間は設けられていません。異常の内容によっては、補修が完了するまで当該箇所を使用しないという措置も「必要な措置」に含まれます。
Q. 「異常なし」の記録だけでは不十分なのでしょうか?
異常が無かった場合は、検査年月日・検査方法・検査箇所・検査結果を記録すれば法律上の記録事項を満たします。一方、異常があった場合は、結果に加えて補修等の措置内容まで記録する必要があります(労働安全衛生規則151条の23)。異常の有無にかかわらず同じフォーマットで済ませていると、異常時の記録が漏れやすいので注意が必要です。
Q. 補修した内容も検査記録に含めて3年保存する必要がありますか?
はい。労働安全衛生規則151条の23が定める記録事項には、検査結果とあわせて補修等の措置内容が含まれており、これも他の記録事項と同じく3年間保存する対象です。
Q. 検査を登録検査業者に外注した場合、補修や記録の義務は誰が負いますか?
検査業者に検査の実施を依頼した場合でも、記録の3年保存義務は使用事業者側にあります。補修についても、業者から異常の指摘を受けた事業者が、直ちに補修その他必要な措置を講じる義務を負います。業者から受け取った記録は自社でも保管してください。
Q. 2026年時点で、異常時対応や記録の保存に関するルールに変更はありますか?
2026年時点の規定では、異常を認めたときの補修義務(労働安全衛生規則151条の26等)や記録の3年保存義務(同151条の23等)自体に大きな変更はありません。ただし、令和8年(2026年)1月1日施行で、特定自主検査の検査方法・判定基準を定める「定期自主検査指針」が法的拘束力を持つ大臣告示「特定自主検査基準」に格上げされています。最新の運用は所轄の労働基準監督署や安全衛生情報センターでご確認ください。